この「Tiger Rag(タイガー・ラグ)」は、1917年にオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドによって発表された初期ジャズの古典的スタンダード曲です。ラグタイムの影響を受けたアップテンポで情熱的な曲調が特徴で、トロンボーンのスライド奏法によってトラの咆哮を表現した独特のフレーズで広く知られています。ルイ・アームストロングやアート・テイタムをはじめ多くの名手にカバーされ、ジャズ史における重要曲となりました。さらに、米国のクレムソン大学などのスポーツチームの応援歌として定着しているほか、日本の阪神タイガースの応援曲としてもファンに長年親しまれています。

ジャズは20世紀初頭のニューオーリンズで、異文化の交差し易い港町という土壌から誕生しました。アフリカ系アメリカ人の労働歌やブルースが持つ独特のリズムと、キリスト教の霊歌、さらにヨーロッパ移民のクラシック音楽やブラスバンドの和声が融合したことが背景にあります。南北戦争後に大量の中古管楽器が出回ったことや、人種隔離政策によって西洋音楽の教育を受けたクレオール層と黒人演奏家が合流したことも大きな契機となりました。過酷な差別や社会情勢の中で、人々の哀しみや生きる情熱を即興演奏に乗せて自由に表現したことから、全く新しい音楽として芽吹きました。

クレオール層は西洋クラシック音楽の素養と高度な演奏技術をジャズにもたらしました。裕福な環境でパリ仕込みの教育を受けた彼らは、正確な運指や音程、複雑な和声や対位法の知識を備えていました。1890年代の人種隔離政策により黒人居住区へ追いやられると、楽譜は読めないものの感情豊かな即興とブルースの感覚を持つ黒人演奏家と合流します。クレオールの緻密なアンサンブル構成や華麗な対旋律の技術と、黒人の野性的なリズムやブルー・ノートが融合したことで、ジャズは単なる伝承歌を超えた洗練された音楽形態へと進化を遂げました。