バイノーラル音声は、人間が実際に音を聴く状態を再現して録音・再生する立体音響技術です。ダミーヘッドやマイクを人間の耳の位置に配置して録音することで、鼓膜に届く音の音量差や時間差、耳介による音波の反射(頭部伝達関数)をそのまま記録します。これをヘッドホンやイヤホンで再生すると、あたかもその場に自分がいて全方位から音が響いているかのような強い立体感と臨場感を得られます。ASMRコンテンツやゲーム、VR空間などで幅広く活用されている音響手法です。

バイノーラル音声はダミーヘッドなどを用い人間の耳に届く音波をそのまま2チャンネルで固定録音した技術で、主にヘッドホン再生を前提とします。一方の空間オーディオは音の素材と三次元の位置情報を分けて記録し、再生機器やリスナーの頭の動きに応じてリアルタイムで立体音響を計算・構築するシステムです。録音物として音像が固定されているバイノーラルに対し、空間オーディオはスピーカーやヘッドトラッキングなど様々な環境に柔軟に対応できる再現性の高さと拡張性に大きな違いがあります。

「バイノーラル(binaural)」の語源は、ラテン語の単語を組み合わせた合成語です。

  • bi-(バイ): 「2つの」「両方の」を意味する接頭辞
  • aural(オーラル): ラテン語で「耳」を意味する auris に由来する、「耳の」「聴覚の」を意味する形容詞

これらが合わさり、「両耳の」「両耳に関する」という意味になりました。

もともとは音響用語ではなく、医学・生理学の分野で「左右両方の耳を使って音を聴く構造や働き(両耳聴)」を指す言葉として使われ始め、後に現在のような「人間の両耳の聴こえ方を再現する音響技術」の名称として定着しました。